キジ猫の雑記帳

行き場のない野良猫の生活と意見です

失われた即席麺を追いかけて、

即席麺の現状について書いてみることにしよう。まずなぜ即席麺について書くのかというところ、即席麺の特異性に触れなければならない。代表的な外食のジャンルの中で、家庭で長期保存できて常備できるのは、うどん、そば、ラーメンなどの即席麺である。少ないコストで家庭でささやかな豊かな気分になれる機会を与えてくれるのが、即席麺なのだ。少し空しい気分にもなってくるのだが負けずに続けよう。ほかに缶詰やレトルトの分野もあるのだが、おすすめはけしてしないが賞味期限を過ぎてもそれほど変わりなく賞味できるのも即席麺の利点である(乾麺にスープの粉末がすでにまぶしてあったり、乾麺とスープが一体化しているものは除く)。油揚げ麺はざるにあげるなどして食べると油の劣化を緩和することができる。

さてその即席麺の現在の潮流であるが、油揚げ、ノンフライの両種類、いやノンフライに顕著か、ともに共通して進んでしまったのが、ストレート化(直麺化)、太麺化と言えるのではないか。ストレート化の端緒を切ったのだろうかと思われるのが「どん兵衛・そば」の直麺化ではなかろうか。「どん兵衛・そば」は油揚げ麺だが以前は通常の袋ものの油揚げ麺のインスタントラーメンのようにちじれていた。それが生地を麺切り包丁で切り出したようなまっすぐな麺になったのである。

で太麺化といえば、日清の創業者が亡くなったあとあたりから、麺の食感をもっとよくしたい、それが日清の社是だみたいに、と、新製品に加えられていった(カップの太麺とか)。で実は他社も技術を模索していたようで各社で新製品のちゃんぽんが発表されたあたりから、各社太麺が出揃うような気がする。ここでマルタイあたりからあったチャンポンからの新製品のチャンポンの新しさを記述できねば印象論にとどまるが、ここではその用意はない。ただずいぶん太くてコシがあるのだなと思った記憶はある。

で、このちゃんぽん、あるいは太麺化というのは結構イノベーションらしくてちゃんぽんをめぐって日清とサンヨーの間で裁判沙汰になっていた気がする。何が飛躍なのか想像してみると、塩分をコントロールしながら、麺に太さと弾力をどう与えるかあたりが肝の気がする。ざるにあげて茹で湯から分離される素麺などの乾麺では麺の塩分含有量は高い。この塩と技量が乾麺のコシの強さの由来かと推測する。が即席麺では茹で湯でスープをとくのがデフォなのである。やたらと塩分を加えることはできないのだ。このあたりの麺の太さとコシの強さのコントロールを塩分の制約を緩和して実現できるようになったのが、現在の生麺食感のノンフライ麺の盛況の背後にある、技術的に可能にしたものではないかと考えている。とはいえ、このあたり現在のノンフライ麺と同型の乾麺って、地元発のご当地ラーメンとして以前からあった気もするので、それがただの乾麺だったか即席麺だったか記憶が定かでないので、本当にそうなのかあやしいことは言い添えておこう。が、実は強調したいことは別にある。それはこの過程で麺がストレート化していったことである。油揚げ麺の持つ美質というか、武器の一つであったちじれが尊重されなくなっていったのだ。

最近、油揚げ麺をつけ麺で食して、うめえと唸りながら考えていたのは、このちじれこそがスープを絡ませて舌に運んでくる武器ではないのかと考え始めているのだ。この項続く。

 

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